もうすぐ三者面談…進路が決まっていない高校生へ(前編)

大学受験では,どの大学を受験すればよいのか … だけではなく,どの学部・学科を選べばよいのか? という問題があります。
もう既に決まっている! という方もいらっしゃるかと思いますが,なんとなく決めた … とか,まだ決まっていなくて,ひそかに悩んでいる … という方も多いと思います。

なかなか表面化しにくい数値なのですが,卒業を待たずに中途退学してしまう学生割合を,文部科学省が公表している数値から推測してみますと,大学4年間で約 10 %程度になると考えられます。休学率も同程度の数値ですので,それらを含めますと,実に2割ほどの大学生が,何らかの理由で休学・退学の状態にあるということになります。つまり,同じ年度に入学した同期生の約2割が,一緒に卒業していないということです(ちなみに留年は考慮していません)。

休学・退学に至るにはさまざまな理由があるはずですが,受験生の皆さんと相談しておりますと,《 将来像 》があいまいで,どの学部・学科を受験したほうがよいのかと悩んでいるケースが多い印象です。志望はどこですか? と問われると困ってしまう … というわけです。もちろん,それが直ちに大学での休学・退学に結びつくわけではありませんが,要因の一つとなっている可能性は否定できません。
そして,この “《 将来像 》があいまい ” という現象は,少なくとも,次の3つに分けられるのではないかと考えられます。

○ これまでに《 将来像 》については,まったくといってよいほど考えてこなかった。自分は,何が好きで得意で … ということもあまり思いつかないし,やりたいと思うことはあっても,職業とは(直接的に)結びつくイメージがない。
○ やりたいことが数多くあり,どれもが魅力的で一つに絞り込むことができない。ある特定の職業について,ずっとそこで働くと仮定したら,おそらくとても後悔する人生を過ごすことになるような気がしている。あるいは,いろいろなことをしたいとは思うものの,どんな職業についても,平凡な業績で終わる・平凡な生活に終わるだけのような気がして,自分を活かすにはどうしたらよいか分からない。
○ 夢とか第1志望といえるような《 将来像 》や職業はあるものの,それ以外にやりたいことはなく,かつ,夢・第1志望の将来像は,現在の自分の実力・成績では実現不可能と判断できる故に,では,次にどうしたらよいのか,どう考えたらよいのかが分からない。

実は,上記に加えて,実際の仕事に就いて(社会人となって)から,いわゆる挫折感や失望感,不完全燃焼的な思いを抱いてしまい,早期離職につながるケースもあるようなのです。

そろそろ,夏期以降の模試成績結果が判明する時期であり,三者面談が始まる時期でもあります。
では,どのようにして進路を決めていけばよいのか? というテーマについて,今回は解説していくことにいたします。

本題に入る前に,前置きを長々と書いてしまいましたが,そんな悩みを周囲の大人に相談しますと,“ 自分の人生は自分で決めなさい ” にはじまり,“ 社会を甘くみてはいけない ”,“ 日本は何をしたって生活していけるから大丈夫 ”,“ 自分だってたまたま今の職業に就職しただけのことだから … ”,“ それが人生だから … ” という具合に,アドバイスではなく,何故か “ 諭される ”(?)ことになってしまうものです。

そんなことになってしまう最も大きな理由は …[ 自己理解 ]というキーワードが深く関係しているからです。実は,自分のコトが(大人たちも?)よく分かっていない可能性があるのです。

[ 自己理解 ]
自分のコトをよく分かる … とても抽象的なお話しになってしまいそうなテーマですが,受験に限定してみますと,いくつか方法論が(既に!)あるのです。

《1》 VAK system 優位系のチェック
《2》 ホランド理論( RIASEC )
《3》 成績タイプのチェック

上記3項目を概説するだけでも1冊の本が書けそうな分量となりそうですので,今回は《2》ホランド理論に話題を絞りたいと思います。

[ ホランド理論 ]
これは,適職診断などで古くから利用されている理論です。もちろん,今後,人工知能( AI )やロボット技術の拡大・浸透によって,約 10 〜 20 年後には,日本の労働人口の約 49 %が AI で代替できるという研究結果( 2015 野村総研 )が提示されておりますので,従来型のホランド理論が,将来的にも “ 正しい ” 判断基準となるか否かは不明瞭だといえます。

しかし,ホランド理論がもつ適職診断の考え方は,結局のところ,人間の特性や指向性と密接に関連していますので,自己理解とか自分探しというプロセスにおいて,とても重要な役割を果たすことになります。
ホランド理論を利用する際のポイントは2つあります。

○ 自分の指向性(考え方や好き嫌いの方向性)を
[ ひと vs もの ]+[ データ vs アイディア ]
という2軸においてチェックしていく方法です。

[ ひと ]と関わるのが好きなのか,[ もの ]を扱う方に興味があるのか …
[ データ ]を集めたり分析したりするのがよいのか,[ アイディア ]を出すのが得意なのか …
どちらかといえば ○○ の方が自分の好み・関心がある … という判断のしかたをします。“ 向いている ” か否か … という判断ではありませんのでご注意ください。

例えば,[ ひと ]&[ アイディア ]の方が強い … ということであれば,適職としては,芸術的・創造的ビジネス 〜 たとえば会社の企画部 〜 の可能性が高いと判断できます。
[ データ ]&[ もの ]の方が惹かれる … ということであれば,会社の総務課や自治体の公務員などが適職の可能性が高いと判断できます。

○ ホランド理論から判明した自分の適職傾向(前図 RIASEC の6分野)を,大学での学びとマッチングさせるには,どの学部・学科が適切なのかを,調べたり,相談したりします。

“ 将来像は? ” と尋ねますと,ほとんどの人は,○○ 屋さんになりたい … と,職業名で答えるものです。しかし,将来的に約半数の職種がなくなる可能性があることに加え,日本では総合職と専門職という2種類の分類しかありませんし,さらには卒業時の就職状況の良し悪しという社会的情勢も大きく関係してきます。将来を職業名で考える世代は既に過ぎている … と考えてよさそうです。むしろ,自分が何に向いているのか,どのようにすれば(社会人として)社会貢献することができるのか … 極論すれば,あなたには “ 夢 ” や “ 憧れ ” がありますか? と問うことが,これからは重要になってくるといえますね。

(自分の力やポテンシャルをリソース(資源)と呼びます。そして,自分のリソースを,どのようにしたら,自分の幸福や社会貢献に結びつけられるのだろうか … と発想することを[ リソースコネクト ]といいます。さて,あなたの[ リソースコネクト ]のビジョンはどんなものでしょうか?)

ただし,ここで厄介なことがあります。それは,同じ学科名でも大学が異なることで,学ぶ内容やメインの研究分野などが大きく異なることが多い … という事実です。たとえば,同じ文学科でも,江戸時代までの古典文学を論じることをメインとする大学があれば,日本美術史に重きを置いて研究する大学もあります。“ 学び方 ” という意味では同じことになりますが,何を題材として学ぶのか,どんな手法を用いて調査・分析していくのか … 等々は(大学や担当教員によって)異なっているのが一般的ですので,自分とのミスマッチが生じる可能性は大きくなってしまいます。
さらに,学科に対する受験生側の受け止め方・感じ方が異なるという問題もあります。たとえば,経済学科と経営学科とを混同していたり,高校教員になるには教育学科に合格するしかないと思い込んでいたり … というケースがあげられます。

さて,ここまでお読みいただいた皆さま … そういう方法・考え方があるのかぁ 〜 という思いと同時に,では,自分で判断した適職傾向( RIASEC 6分野)や学部・学科が,本当に正しいのか? それはどうチェックしたらよいのか? という,別の疑問や不安が湧き上がってくるのではないかと思います。

今回は,まずは,ホランド理論のご紹介までとさせていただきます。
次回は,適職傾向( RIASEC 6分野)と学部・学科のマッチングにまつわるお話しを予定したいと思います。

投稿者プロフィール

繁泉 祐幸
繁泉 祐幸
東北大学理学部卒。かつては大手予備校・仙台校事務局長として運営全般の責任者を務め、地元テレビ局の番組出演も果たす。本校においては入試情報分析室室長を務め、東北6県の高等学校に赴いて講演活動等を行う。受験に対するモットーは『合格は100%技術である。』

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