JAPAN e-Portfolioのポイントとアクティブラーニングにおける評価について

繁泉先生による入試に役立つコンテンツ『YOKEN Success Square』。今回は 《新入試特別号》 として、『eポートフォリオ』『アクティブラーニング』に焦点を当てた内容でお届けします。

『 学力の3要素 』について

高大接続システム改革における『 学力の3要素 』とは …

[ ① 知識・技能の確実な習得 ]
[ ②(①を基にした)思考力,判断力,表現力 ]
[ ③ 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度 ]

と表現されています。このなかで,①知識・技能,②思考力・判断力・表現力は,学科試験を主とした“ 入試 ”において実施されています。面接・論説・小論文,志望理由書・学修計画書・活動報告書等々の《 書類 》も,その“ 入試 ”のなかに含まれているといえます。そして,2020 年度からの《 共通テスト 》実施に向けて,既に《 書類 》に対する配点化が大きくなったり,面接・小論文が本格的な総合問題のような内容になったり … という変化が生じています。

今回は,そのような《 入試問題 》ではない問題として,『 学力の3要素』のなかの[ ③ ]について取り上げたいと思います。

実は[ ③ ]の内容は,さらに[ 主体性 ]と[ 協働性 ]の2つに分かれるのです。そして,これまでの入試では,高校から提出される調査書によって,それらを測る … とされていました。
これからの入試では,[ 主体性 ]と[ 協働性 ]を測る手段として,『 JAPAN e-Portfolio 』『 アクティブラーニング 』が挙げられます。

『 JAPAN e-Portfolio 』と『 デジタル調査書 』

『 JAPAN e-Portfolio 』は平成 33 年度の入試から活用されようとしています。文部科学省主導の「 大学入学者選抜改革推進委託事業 主体性等分野 」というタイトルで事業がスタートしており,パソコン等からオンライン上で生徒の皆さんが自分の活動や成果等を入力することで,学びに対する『 主体性 』をデジタル情報化し,それを入試における評価の一つとして活用しようという意図があります。実際に『 JAPAN e-Portfolio 』を入試で活用したいと登録している大学は,私大を中心として増え続けています。また,調査書も,先生方が“ 紙 ”に書き込む形式から,オンライン上で諸項目を入力する『 デジタル調査書 』へと移行することになっています。

ここで注意したいことは,『 デジタル調査書 』は,これまでどおり入力し作成する主体は先生ですが,『 JAPAN e-Portfolio 』は,現在の志望理由書・活動報告書等のように入力し作成する主体は,生徒さん(受験生)ということです。つまり,志望理由書や活動報告書のように,受験用書類として出願する際に用意すればよい … ということにはならず,高校生活全般にわたる自分の探究活動履歴等々を,その都度,入力していくべきシステムに移行していくということなのです。

ちなみに,『 JAPAN e-Portfolio 』にログインし,自分の活動履歴を入力する際には,今のところ8領域[ 探究活動,生徒会・委員会,学校行事,部活動,学校以外の活動,留学・海外経験,表彰・顕彰,資格・検定 ]が用意されているようです。さらに,各領域では,活動履歴の入力と同時に,その活動に対する《 振り返り(リフレクション)》も入力することになっています。また,ポートフォリオという資料の性格上,先生も各生徒さん(受験生)の入力内容を閲覧し,必要に応じてアドバイス等を行なうことになっています。

お気づきかと思いますが,資格や探究活動が多い方がよい … ということにはならないようです。何故そのような資格をとろうとしたのか,何故そのような探究活動をしようとしたのか … 等々の[ 目的・目標 ],そして,それらの活動履歴からどのような[ 振り返り(リフレクション)]を得たのか,さらに,その[ 振り返り ]から,次にどのような活動につながっていったのか[ 流れ・ストーリー ] … というポートフォリオ(まとまり,まとめ)とすることが重要なのです。

これからその重要性が大きくなってくるであろう『 JAPAN e-Portfolio 』を上手に活用するためのポイントとしては,次の3つの《 力 》に注目する必要があるでしょう。

○ 好奇心・探究心 ⇒ 推論力・洞察力・論理力 ⇒ つなぐ
○ 振り返りの力(モニタリング ⇒ リフレクション)
○ まとめる力 ⇒ 構造化

難しく感じる生徒さんがいらっしゃるかもしれませんが,まずは次の3ポイント …

POINT

① ワクワク・ドキドキする感覚を大切にすること
② 自分を客観的(感情等に流されず)に観察すること
③ 知識や経験とのつながりを意識すること

このような意識をもつことが重要なのだと言い換えることができます。
実は,② とは自分自身に対する[ 読解力 ]であり,③ は[ アタマの構造化 ]であり,既に,

として解説させていただいている内容なのです!

そこに,高校生活のなかで,[ 好奇心 ](ワクワク・ドキドキ)を加えてみよう! と意識していただくことで,『 JAPAN e-Portfolio 』は(メンドウに思えるかもしれませんが … )自ずと素晴らしい内容に組み上がっていくはずです。

『 アクティブラーニング 』について

次に,もう一つのテーマである『 アクティブラーニング 』のお話しです。

《 主体的学び・協働的学び・深い学び 》という“ もう一つの学力3要素 ”ともいわれる流れのなかで導入が進んでいる学習形態です。これまでの[ 先生 ⇒ 生徒 ]という一斉授業,教え込み型授業という,一方通行的な授業形態のあり方は『 系統学習 』と呼ばれていますが,それ以外の形態をとる学習を,すべて『 アクティブラーニング 』と呼称しています。

アクティブラーニングといいますと,付箋紙にまとめて貼り付けたり,机を移動して生徒さん皆で話し合ったり … というグループ学習形態を思い浮かべるかもしれませんが,実は,さまざまな方法があるのです。

反転学習,ハークネス法,知識構成型ジグソー法,劇場型授業
KP 法(紙芝居プレゼンテーション),KJ 法(川喜田二郎法)
Think-Pair-Share 型,マイクロディベート,ピアインストラクション
教えて考えさせる授業(市川伸一編)

ざっくりとリストアップしただけでも多種多様です。ただし,目的は一つであり,系統学習のみ(一方的な知識等の教え込み)にならないようにする … ということです。“ 教え込み型(詰め込み型)”では,[ 主体性 ]や[ 協働性 ]が損なわれる可能性が大きく,実際にそうなっているようにみえるものです。個性やイノベーション(革新)が重要とされる時代において,没個性的な人間を生み出してしまうかもしれない教育のままではダメなのではないか … という考え方から発しているといえます。

ところが,ここで厄介なことがあります。

『 そのような主体性やら協働性とは,どのようにして評価するのか? 』
『 そのような評価は,すべて調査書に書き込むことになるのか? 』
『 調査書に書き込むときは,なんでも自由に表現してかまわないのか? 』

という疑問です。疑問 … というよりも,実際的に進行している“ 悩み ”ともいえるでしょう。
(記入・作成される先生方にとっても,評価される生徒さんにとっても … )

アクティブラーニングにおける評価法として『 ルーブリック(表)』を利用する手法がありますが(その詳細は割愛させていただきますが … ),日本では一般的手法として普及していない故か,公的評価法として確立されていません。また,ルーブリック自体に,数量的ルーブリック(いわゆる段階評価)と質的ルーブリック( ICE モデル等)という性質の異なる評価法が存在していることもあってか,入試での活用という議論には至っていないようです。
そこで,『 JAPAN e-Portfolio 』の登場! という言い方も可能だと思われます。『 デジタル調査書 』による先生主体の評価,『 JAPAN e-Portfolio』による生徒(受験生)主体の自己評価 … 入試では,それらを総合的に評価するという仕組みになりそうです。

さて,初めて耳にするような評価システムが動き始める! と知りますと,ひどく心配になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。確かに『 JAPAN e-Portfolio 』は生徒さん自身が入力し,先生方からのアドバイスをいただいて,高校3年間の活動履歴をポートフォリオにまとめていくことになりますので,それが合否を左右する … と考えますと,悩みが大きくなってしまいそうです。

しかし,これまでも(紙の)『 調査書 』は,“ 総合判定の資料とします ”という意味で,特に合否ギリギリラインにおける合否判定の際に用いられる場合と,初めから配点化して総合点に組み入れられる場合とに分けられておりますが,学科試験の成績を“ ひっくり返す ”ほど配点比率が大きいとは言い難いものです(ただし,ごく一部の私大入試を除く)。
ですから,『 JAPAN e-Portfolio 』において大切なことは,高校生活における《 自分の活動履歴 》を丹念に入力していこう! という[ 自律的マインド ]です。そして,それを支えるのが[ 読解力 ]であり,[ アタマの構造化 ]なのです。

つまりは … 《 読書しましょう!》,《 ノートをしっかりと工夫してとりましょう!》
そうすれば,自分の活動履歴がポートフォリオとして,自ずと組み上がっていくこと間違いなしということになりますね。

投稿者プロフィール

繁泉 祐幸
繁泉 祐幸
東北大学理学部卒。かつては大手予備校・仙台校事務局長として運営全般の責任者を務め、地元テレビ局の番組出演も果たす。本校においては入試情報分析室室長を務め、東北6県の高等学校に赴いて講演活動等を行う。受験に対するモットーは『合格は100%技術である。』

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